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大阪高等裁判所 平成4年(ネ)1199号 判決

大阪府東大阪市稲田新町二丁目三一番二六号

控訴人(附帯被控訴人)

カシヤマ化工こと

柏木城二

右訴訟代理人弁護士

小松正次郎

小松陽一郎

神戸市中央区多聞通二丁目四番四号

被控訴人(附帯控訴人)

ブックローン出版株式会社

右代表者代表取締役

工藤俊彰

右訴訟代理人弁護士

清木尚芳

松本岳

三浦州夫

主文

本件控訴及び附帯控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とし、附帯控訴費用は附帯控訴人の負担とする。

事実及び理由

一  申立て

1  控訴人(附帯被控訴人)の求めた判決

原判決中控訴人敗訴部分を取り消す。

被控訴人の請求を棄却する。

被控訴人は控訴人に対し、一〇〇〇万円及びこれに対する昭和六一年一二月九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

本件附帯控訴を棄却する。

2  被控訴人(附帯控訴人)の求めた判決

本件控訴を棄却する。

原判決中の本済却方を次のとおり変更する。

附帯被控訴人は、原判決別紙一「イ~ニ号物件目録」、同別紙二「ホ号物件目録」及び同別紙三「ヘ号物件目録」記載の各物件を製造、販売してはならない。

附帯被控訴人は、前項記載の各物件、その半製品(前項記載の各物件の形状を具備しているが、いまだ製品として完成に至らないもの)及び右各物件の製造に必要な金型、シールを廃棄せよ。

附帯被控訴人は附帯控訴人に対し、五〇〇万円及びこれに対する昭和六一年三月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

二  事案の概要

次に付加、訂正、補充するほか、原判決記載のとおりである(五頁目表以下の「第二 事案の概要」の項)。

以下においては、控訴人(附帯被控訴人)を「控訴人」と表記し、被控訴人(附帯控訴人)を「被控訴人」と表記する。

1  原判決一七頁四行目の次に改行して、次のとおり付加する。

「この出願手続においては、平成二年七月九日付けで、七頁四行目記載の実開昭五七-一八五三九七号の公報(被控訴人の別考案の公開実用新案公報)に記載の考案から極めて容易に推考することができたとの理由をもって、拒絶理由通知があった(乙五四の一)。

控訴人は昭和六三年九月一四日、右出願手続における手続補正をしたが(乙五二)、補正期間徒過後との理由で不受理処分を受けたので(乙五三)、昭和六三年一〇月二九日、この手続補正書に記載と同一の登録請求の範囲をもって、考案の名称を「組みき」とする新たな実用新案登録出願をした(実願昭六三-一四一六七五。乙四六の一~三)。この出願については、平成四年一二月二五日登録査定があり(乙五七)、平成五年四月二三日、実用新案登録第一九六二八一六号として登録されるに至っている(乙五九。この実用新案出願公告公報を控訴審判決に添付する)。」

2  被控訴人は附帯控訴で、原判決が認容したところを越えて補償金の請求をしないこととし、本件考案の出願公告日以降のホ号物件(二)の販売額二二万一〇四〇円を、原判決が認めたホ号物件(一)の販売総額二八八万三一四八円(六五頁三行目)に加えた三一〇万四一八八円の三〇%相当の九三万一二五六円をもって、原判決を変更して請求する損害賠償金とした。

そして、この九三万一二五六円と、原判決が認容した補償金一七万四六〇四円、それに弁護士費用四〇〇万円の内金三八九万四一四〇円の合計が、被控訴人の当審での請求額となっている。

3  原判決二一頁一行目の「二億二三五〇万円」を、「二億四一〇五万八四一五円」と改める。

4  同三行目の「平成三年九月三〇日」を、「平成四年四月二八日」と改める。

5  同四行目から五行目の「二億一六〇〇万円(一ヵ月当たりの被告の純利益二七〇万円×八〇ヵ月)」を、「二億三三五五万円(一ヵ月当たりの控訴人の純利益二七〇万円×八六・五ヵ月)」と改める。

6  同七行目の「二五〇万円」を、「二五〇万八四一五円」と改める。

三  争点に対する判断

当裁判所も、被控訴人の本訴請求は原審が認容した限度で理由があり、控訴人の反訴請求は理由がないものと判断する。その過程は、次に付加、訂正するほか、原判決二三頁以下の「第三 争点に対する判断」の項に説示きれているとおりである。

1  三〇頁四行目から五行目の「同考案がその出願日直後に」を、「同考案は、前判示のとおり、本件考案の出願日より後の昭和五七年五月二九日に出願公開されたのであって、本件考案の出願前に」と改める。

2  同一〇行目の「端面」の次に「に」を加える。

3  三三頁三行目の「互い」を「互」と改める。

4  三五頁六行目の「本件考案」を「本考案」と改める。

5  四五頁一行目の次に改行して、次のとおり付加する。

「 (4) 控訴人が、控訴審の平成五年九月三〇日付け第十一準備書面で、右の(2)に摘記した控訴人の主張を補正する旨述べたのも、右の(3)で取り上げた主張と同旨の主張を敷衍するに帰する。すなわち、イ~ニ号物件は、控訴審の審理中に取得した前記の実用新案登録第一九六二八一六号の実用新案権に係る考案が奏する作用効果と同様の、リズミカルな音声を発し、複雑に協和して快音を発するなど、控訴審判決添付の実用新案公報の考案の詳細な説明に記載の顕著な作用効果を奏し、この点でイ~ニ号物件は重要な構成要件を有しているというのである。

しかし、右の(3)に判示したように、イ~ニ号物件は本件考案の構成要件をすべて充足するものであるし、仮にイ~ニ号物件が右実用新案権を実施するものであるとしても、右実用新案権は本件考案の後願に係るものである以上(実用新案法一七条参照)、イ~ニ号物件が、本件考案の技術的範囲に属し、本件実用新案権を侵害するものであることに変わりはない。」

6  六九頁二行目の「本訴において」の前に、「その後撤回したものの、」を挿入する。

四  結論

よって、原判決は正当であって、本件控訴及び附帯控訴はいずれも理由がないから棄却することとし、控訴費用及び附帯控訴費用の負担につき、民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 潮久郎 裁判官 山﨑杲 裁判官 塩月秀平)

〈19〉日本国特許庁(JP) 〈11〉実用新案出願公告

〈12〉実用新案公報(Y2) 平4-33916

〈51〉Int.Cl.3A 63 H 33/08 G 09 B 1/36 識別記号 A 庁内整理番号 7265-2C 8603-2C 〈24〉〈44〉公告 平成4年(1992)8月13日

請求項の数 1

〈54〉考案の名称 組みき

〈21〉実願 昭63-141675 〈55〉公開平2-63897

〈22〉出願 昭63(1988)10月29日 〈43〉平2(1990)5月14日

〈72〉考案者 柏木城二 大阪府東大阪市菱屋東327番地

〈71〉出願人 柏木城二 大阪府東大阪市菱屋東327番地

〈74〉代理人 弁理士 小松正次郎 外1名

審査官 結田純次

〈56〉参考文献 実開 昭61-124698(JP、U) 実公 昭61-32718(JP、Y2)

実公 昭60-34000(JP、Y2)

〈57〉実用新案登録請求の範囲

多面形柱体の上端面に円弧状突起3、3’及び突子4を有する切込片5を数個突設した円状突部を有する組みきにおいて、柱体1の円状突部に組み合わさるべき円形凹部9を設けてその外周部に隆起縁9’を形成し、円形凹部9の内周面にリング状溝10を周設して、該リング状溝10内に所要数のリブ11を配設し、柱体1内に小球12を収納してなる構造。

考案の詳細な説明

本案は組みきにおける組み合わせ機構の改良に関するもので、幼児でも容易に組み合わせ、回転し、かつ分離することができるようにしたことに特長を有する。

本案の実施例を添付図面について説明すると、多面形柱体の上端面に円弧状突起3、3’及び突子4を有する切込片5を数個突設した円状突部を有する組みきにおいて、柱体1の下端面に、第3図に示すように円状突部に組み合わさるべき円形凹部9を設けて、その外周部に隆起縁9’を形成し、円形凹部9の内周面にリング状溝10を周設して、該リング状溝10内に所要数のリブ11を配設し、柱体1内に小球12を収納してなる構造である。

本案の構成は上記のとおりであつて、円状突部に円形凹部9を容易に組み合わせることができ、そして幼児がこれを手動で一方向に回転させ、あるいは反対方向に回転させるときは、円形凹部9の内周面に周設したリング状溝10内に配設せる所要数のリブ11に切込片5の突子4が接触摩擦と離間を繰り返えしてリズミカルな音声を発し、これに柱体1内の小球12の転がり音が不規則、複雑に協和して快音を発し続けるので幼児の喜ぶこと限りなく、またこの多面体表面に数字や絵を表示して、これを数個つなぎ合わせ、さらにそれらを回転させることによつて単語を作り、あるいは絵合わせをして遊ぶこともできる組みきおもちやである。

上記のように本案は幼児が組み立て、回転して興味をもつて遊ぶことができるのみならず、組み合わせが第1図に示すように円形凹部9の外周部の隆起縁9’の存在により小隙13をつくつてあるので、幼児が回転させて遊ぶのに至極容易であり、また幼児が分離することも至つて容易にできる等の諸特長を有するものである。

図面の簡単な説明

第1図は組み合わせ状態における一部欠 縦断側面図、第2図は円状凸部を示す正面図、第3図は円形凹部を示す背面図、第4図は分離状態における斜面図である。

符号の説明、1は多面形柱体、2は上端面、3、3、3’は円弧状突起、4は突子、5は切込片、6は間隙、7は抜き孔、8は下端面、9は円形凹部、9’は隆起縁、10はリング状溝、11はリブ、12は小球、13は小隙、14は表示面。

第1図

〈省略〉

第3図

〈省略〉

第4図

〈省略〉

第2図

〈省略〉

符号表

1 多面形柱体  8 下端面

2 上端面    9 円形凹部

3 円弧状 部  9’ 隆起縁

3’ 円弧状 部 10 リング状溝

4 実子     11 リブ

5 切込片    12 小球

6 間隙     13 小隙

7 抜き孔    14 表示面

実用新案公報

〈省略〉

〈省略〉

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